リブセンスは、副業を反対もしなければ推奨もしません。

就業時間外の過ごし方は、自由であるべきです。趣味を楽しむ、育児をする、介護をする、勉強に励むなど、時間の使い方は人それぞれ。なのに、そこに利益が絡んでくると、禁止や制限をせざるを得なくなるのがこれまでの副業制度でした。

2019年9月、リブセンスはこんな決断をしました。それは「副業申請の廃止」。一人ひとりの選択を尊重し、働き方の多様化を実現させるため、会社外での時間の使い方には介入しないことを決めたのです。(※競業に該当する領域を除く)

そこで今回は、さまざまな社外活動に取り組むリブセンスメンバー5名にインタビューを実
施。強みを活かして社外でも活躍する、それぞれの生活が見えてきました。

ケース1 コミケの会場地図アプリ「コミマップ」を開発

エンジニア・堤下薫さんは、コミケ(コミックマーケット)の会場内地図アプリ『コミマップ』を開発しています。コミケとは、半年に一度開催される国内最大規模の同人誌即売会で、毎回50~70万人の一般参加者が東京ビッグサイトに訪れます。

2014年、当時大学2年生だった堤下さんは、コミケの会場マップが「紙」であることを不便に思います。これほどの規模のイベントなのに、アナログな方法しかないなんて。そこで堤下さんは、会場マップをスマホでスムーズに見られるアプリを開発。その噂は徐々に広まり、現在ではイベントのたびに約1万6000のダウンロードがあるのだそうです。

堤下さん「アプリストアに200件以上のレビューがついているのですが、その中でも『コミマップ』は星4.6以上を維持しています。当日Twitterの反応を見ながら、不具合があれば30分ほどで修正をすることも。使いたい技術を選定して、プロダクト開発を試せるのは経験を積む良い機会になりますし、会場で実際に使っている人を見ると嬉しくなりますよね」

『コミマップ』の開発を初めて5年目となる今年、堤下さんはアプリの一部有料化を実施。有料にすることに不安もあったそうですが、ユーザーからの反応は上々で、中には「やっとコミマップにお金を払える」との声もあったそうです。

副業は新たな技術を試す場に最適で、リブセンスの仕事でも使用する技術の幅が広がったのだと語ってくれました。

ケース2 お花のサブスクのWEBコンサルを成果報酬で

お次は、『マッハバイト』の広告運用チームに属する山田修さん。山田さんは、月に二度自宅にお花が届く、花屋のサブスクサービスのWEBコンサルを担っています。SEO対策や広告での集客、ユーザーに長期利用してもらうための仕組み作りなど、アドバイスは多岐に渡るのだそう。

出会いは、居酒屋。隣に座っていた人が「WEB集客に困っている」と話しているのを聞き、山田さんがその場で色々とアドバイスをすると、「手伝ってくれない?」と誘いを受けたのが始まりでした。そのサービスの口コミを調べたり実際に購入したりして、本当に良いサービスなんだと実感したことで、本格的に手伝いをすることに決めたのだそう。

山田さん「副業の経験がリブセンスの仕事にも活きています。しかし本業がおろそかになってしまっては意味がないので、副業をすることが良いプレッシャーになって、本業での集中力を高めているように思います。それから副業がただの時間の切り売りにならないよう、報酬は成果報酬型にしてもらっています」

ぶっちゃけ、稼いでいますか?という質問に、「全然です(笑)」と答えた山田さん。お金よりも経験を積むための手段として、WEBコンサルの副業をしているのだそうです。

ケース3 レストランや美術館で歌うお仕事

シンガーとして活躍しているのは、不動産ユニットの結城アンナさん。今年入社した結城さんは、入社1年目ながらパワフルに二足のわらじで活動しています。

幼い頃から歌うことが好きだったという結城さんは、舞台に立つことを夢見てきたそう。会社員として就職したことで一度は夢を諦めたものの、機会を自分で作っては、レストランや美術館で歌を披露しています。2019年9月には、リブセンス社内で音楽祭も企画。フライヤー制作に楽器演奏など、周囲を巻き込みながら行った音楽祭は、多くのメンバーが「働くだけじゃない場所」としてのリブセンスを感じられるイベントとなりました。

結城さん「ギャラは交渉次第なので、赤字になることもあります。でも、自分から動かないと何も生まれないので。社外で歌を歌い始めたことで、自分が望んで行動をすれば道は開けるんだと知ることができました」

歌う場所は、自分で創る。その気概はリブセンスでの営業の仕事にも活きていると結城さん。今回決まった副業申請の廃止についてはこう考えます。

結城さん「自分の人生、どれくらいの力をどこに注ぐかを自分で決められるのは嬉しいです。ただ、『自由=好き勝手やっていい』ということではないとも思います。本業も副業もいろんな人の力を借りることで成り立っているので、自由には責任が伴うことを忘れないようにしたいです」

ケース4 デザインのトレンドを知るための場として

続いては、デザイナーの阿部洋平さん。WEBサイト、チラシ、名刺などのデザインを社外からも請け負っています。けれども頻度はさほど高くなく、余裕があるときにほどほどに行う程度にとどめているのだそうです。

阿部さん「もともと制作会社出身ということもあり、当時はコンペに勝つためにトレンドを追うことが仕事でした。事業会社のデザイナーはチームの一員として働けるのでやりがいがありますが、制作会社と比べたら緊張感は少ないかもしれません。ときどき外部の仕事を受けるのは、お金のためというのもありますが、トレンドが行き交う場に身を置き、アンテナを立てておきたいという理由もあります」

けれども自分から営業はせず、依頼が来たときにしか副業を受けないのが阿部さん流。デザインは、やっただけスキルになる。けれどもオンとオフのバランスも大切にしているのだと教えてくれました。

阿部さん「自分がやっている副業は時間の切り売りでしかないので、働きすぎて家族との時間が持てなくなるのは、私にとっては本末転倒なんです。知らない業界の話が聞けて知見が広がるメリットはあるけれど、受けるときはいかに効率よく作業をできるかを心掛けるようにしています」

ケース5 新規事業開発で、自社にはない領域に挑戦

最後の5人目は、『転職会議』のエンジニア・城川勇汰さん。学生時代に起業経験のある城川さんは現在、社外の個人チームでCtoCの新規事業開発に励んでおり、起業経験を活かした活動を行っています。

報酬をもらう形態の副業ではなく、自分でプロダクトを作り始めたのには訳がありました。

城川さん「個人的に関心があることを、すべてリブセンスの業務内で実践できるわけではありません。事業上の制約なく手を動かしながら勉強をする環境が欲しくて、知人と共に開発を始めました。それから、自分はエンジニアとしてまだまだ未熟だと思っているので、他社から予算をいただいてアウトプットをすることに心苦しさを感じていました。より自由に挑戦するために、他社との契約ではなく、自分で新しいサービスを立ち上げることにしたんです」

コードレビューの品質を、リブセンスと副業の双方の環境で比較できるようになったこと。本業で満たしづらい欲求や好奇心を発揮できる場ができたことが、副業のメリットだと話す城川さん。また、アウトプットの場があることで、インプットの吸収率も上がってきた実感があるといいます。

城川さん「私は明確な目的があるときのほうが、良質なインプットをすることができるんです。リブセンスと副業、ダブルの目的があることで、学びの姿勢がどんどん前のめりになってきました。『やりたいことをやれる』という環境は、働く上で大きな精神安定剤になっているなと実感しています」

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「副業は、収入をともなう個人的活動」。リブセンス社内ではよく、そんな言葉が飛び交っています。メンバーがさまざまな動機で、さまざまなキャリアを社内外で築いていることを実感できるインタビューになりました。

リブセンスは、副業を反対もしなければ推奨もしない。けれども個人の『やりたい』という気持ちを後押しできる会社でいるために、今後も既存のルールを疑い、組織のあり方をアップデートしていきます。