こんにちは。リブセンス広報です。

今回は代表の村上とデータ分析部門を統括する谷村の対談。リブセンスが新たに提唱する「リアルデータエンジニアリング」について語り合ってもらいました。

「リアルデータエンジニアリング」とは何を意味するのか。そこに注力する背景は。

村上:
まず「リアルデータエンジニアリング」の定義について話しましょう。「リアルデータ」のリアルが意味するのは、リアルタイムではなく、「現実」の意味でのリアルです。人間は物理空間で生活しているので、より現実に近いデータをいかに取得するかが本質的な価値に繋がると考えています。

谷村:
現在、Web上に存在しているデータと実世界に存在しているデータではまだまだ差分が大きいと思っています。リブセンスは社会課題を解決していく会社です。社会課題の解決を考えた時に、この差分を埋めることが解決の手段である場合が今後増えてくると考えているんです。Web上で簡単に手に入るデータで解決出来ることであれば、誰かが既に解決していることかもしれません。また個人的には、リブセンスだからこそ出来る課題解決に挑戦したいという想いもあります。「リアルデータエンジニアリング」は、我々の課題解決のプロセスを表現した言葉だと理解しています。

村上:
背景には、オンラインデータ、特にアクセスログだけに閉じたところだけでサービス開発を進めてしまうことへの危機感もありました。今日のネット産業では短絡的なコンバージョンばかり追い続けて局所最適を進めてしまい、結果としてユーザーが求めるサービスとの乖離が進んでしまっているケースも見受けられます。改めてリアルデータエンジニアリングという言葉を打ち出したのは、リブセンスがユーザー価値に真剣に向き合っていく意思を示したかったというのもあります。

谷村:
「リアルデータエンジニアリング」という言葉は今回初めて作りましたが、実際はこれまでやってきたことを改めて言葉にした形ですよね。マッハバイトでは、アルバイトの求人情報と応募機能しかなかったWebの世界で、私たちは10年前から応募後の情報、採用データを取得してマッチングの精度をあげてきましたし、IESHILはまさにデータが価値になっているサービスです。改めて自分たちのやってきたことを言語化し、進む先を明らかにしたということでしょうか。

村上:
そうですね、整理し言語化したことでより明確になりました。

「データ」を活かすために必要になることは。

村上:
差別化のためのデータの重要性はどこも認識していることだと思います。ただその中でどう実行し、どう勝っていくか。私はインターフェースにもこだわりたいと思っています。

谷村:
データ取得のためのインターフェースということですか。

村上:
はい、GoogleやFacebookの素晴らしいところは、何と言ってもインターフェイス。シンプルで使いやすいインターフェイスは、データを取得してアルゴリズムを回す前提で設計されています。インターフェースはインとアウト、つまりデータ取得と価値提供の両面を同時に実現する必要があると考えていますが、GoogleやFacebookといったサービスはそれをコンセプトレベルから徹底的に作り込んでいます。

谷村:
プロダクトのコンセプトの中にデータの流れまでが組み込まれていないとそこまでは到達できないですよね。

村上:
その通りだと思います。特にリアルなデータほど簡単には取得できないわけですから、ここは重視したいポイントです。

「リアルデータエンジニアリング」によりサービスはどう変わるか。

村上:
ユーザーの未来を予測し、より本質的なユーザー価値が提供できるようになると思います。例えば求人サイトであれば、普通はユーザーが入力した希望条件だけで案件を表示します。でもそこで過去の合否情報などのリアルデータを使えば、応募に対する合格率を算出して確度の高い順に求人情報を並べたりもできる。

谷村:
ユーザーに気に入ってもらって利用が増えれば、よりデータも溜まるようになりますので、合格率の精度も上げていくことが出来ますね。

村上:
就活生が100社受けても落ち続けるなんてことも耳にしますが、本来おかしいですよね。本来提供されるべき情報が提供出来ていないことによってマッチングが機能していないんです。受かる・受からないはもちろん、入社後のマッチ度や満足度といった先の世界もデータ化することで、ユーザーの満足度は格段に上がり世の中が最適化されると思います。

谷村:
就活会議はまだデータを収集することに注力しているフェーズだと思いますが、そういった機能も徐々にリリースされていますね。

村上:
楽しみですね。就活はまだまだ問題が多い市場の一つ。リブセンスの手でこれを大きく変えていきたい。もっと幸せな就活は必ず実現できるはずです。

谷村:
同感です。これを成し遂げるためには、後付けではなく、ユーザーに合わせた情報提供をするという思想ありきでプロダクトを設計することが大事だと思っています。ユーザー像にしっかり向き合い、ユーザーに適した情報を見極めることが鍵になりますね。

リブセンスにはデータ活用を支える基盤があります。

谷村:
4年ほど前から、データ収集基盤LIVESENSE Analyticsの開発を進めてきました。ウェブ上のアクセスログだけでなく、求人応募の合否データなども含めて一箇所に集めて分析ができるようにしています。

村上:
この基盤はかなり社内に浸透してきましたね。

谷村:
特徴的なのはエンジニアに限らずプロダクトマネージャーや事業部長なども、この基盤を使いこなしていることですね。当社くらいの企業規模でこれだけのメンバーが分析基盤を活用しているのは珍しいんじゃないかと思います。
村上:今では営業メンバーも日々活用しているようです。手前味噌ですが、本当にすばらしいものを作ってくれました。さらに機械学習のプラットフォーム化も進んでいますね。

谷村:
はい、昨年新たに作ったLIVESENSE Brainは、データの活用に焦点を当てて機械学習を実装するための基盤です。レコメンドや予測モデルを基盤上に乗せようとしています。各サービスのエンジニアと連携し、一緒にものづくりを進めています。

村上:
LIVESENSE Brainもこれから成果が上がってきますね。

谷村:
はい。リアルデータエンジニアリングの分脈にもあるように、データと技術を組み合わせて解決すべき課題が増えてきていると感じています。これまでだとアクセスログが機械学習のインプットの中心でしたが、これからはさらに幅を広げていくことが出来ると思います。
村上:事業部との連携も強化し、改めて全社一丸となって取り組んでいきましょう。

今後の具体的な取組みは

村上:
各メディアで動いていると思いますが、例えば転職会議であればユーザーと企業のマッチングを意識したサービス設計に取組んでいますよね。

谷村:
はい、これまでは「どの企業のページを見たか」という行動データをもとにレコメンドしていたんですが、今後はユーザーの属性や志向性に合わせてレコメンドしてくように検討しています。

村上:
半年、一年以内には実装していきたいですね。その過程で一番難しいことは何でしょう?

谷村:
短期的には、どのようなUXとして提供できるかというところかと思います。もちろんアルゴリズム面でも難しさはあります。中長期ではデータを広げていく必要があるので、「いかに有効なデータを収集できるか」が鍵になるんじゃないでしょうか。

村上:
究極的にはユーザーに意図的に「入力してもらう」という行動を無くしていきたいですよね。体重計のように、自然とパーソナルデータを預ける仕組みを設計していきたい。例えば、マッハバイトで採用情報を取ることが出来ているのは採用課金という仕組みがあったことが大きいです。採用課金であることで、企業側では支払いのためのプロセスとして認識していただいてますし、ユーザーはお祝い金受け取りのためのプロセスとして自然と行動していただいています。必ずしも課金だけが答えではないと思いますが、何らかの仕組みは作っていきたいと思います

谷村:
先ほどの話にもありましたが、後づけで考えても難しいのでサービスのコンセプトと一緒に作り込んでいく必要がありますよね。プロダクト開発の能力とデータ活用の能力という会社の総合力を問われるところですね。とても重要であり難易度も高い所です。

村上:
そうですね。ビジネスモデル、サービスモデル、収益モデル、データ収集モデルの総合プロデュース力が大事ですね。

最後に、これからやりたいことは。

村上:
ウェブサービスの提供方法や領域は変わっていくかも知れませんが、やはりIT企業として勝ち続けたいですね。「人にとって幸せとは」「良い人生とは」という思想を追求し続けていきたい。

谷村:
その実現を担うことになるのがリアルデータエンジニアリングですね。

村上:はい。本当に良いサービスを作るために、引き続きがんばりましょう。